新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。新規感染者や重症患者も増加傾向に転じ、間違いなく第3波の局面を呈している中で、多くの飼い主さまは先行きも見えず、不安を感じながら動物たちとの生活を送っていらっしゃることと思います。
4月に政府の緊急事態宣言が発出され、ヒトの動きが止まったことで、多くの小売店や飲食店が大打撃を受けました。しかしながらこのとき、当院ではむしろ、前年同期と比較して来院される飼い主さまが増えたように感じられました。これは、①ステイホームによって、動物たちと過ごす時間が増え、動物のわずかな異常にも気がつくようになったこと。②ヒトの医院や病院と比較して、動物病院は比較的安全な場所だと受け止められていたこと。③動物病院は遊興・娯楽施設ではないため、周囲の目を気にすることなく出かけられる場所であったこと(←当時はパチンコやカラオケがやり玉にあげられていましたね)。…などが理由として考えられます。
その後、GoToキャンペーンが始まり、飼い主さまの行動範囲も広がってきたせいか、来院数は例年通りに戻りましたが、この一連の事態で、動物たちの存在が間違いなく皆さまの心の拠りどころであり、彼らと過ごす時間がかけがえのない瞬間であることを再認識された方も多かったことと思います。そうであれば、動物医療に携わる一人としてとてもうれしく思い、この災禍が遺した数少ない光明であったと思います。それにしても、都内の感染者数が1日500人、600人と増え続けている中で、現政権は何の対応策も出せず、非常にもどかしい限り。当面は、個人個人ができることをしっかりとやっていくしかなさそうです。
「GoTo」の利用も、十分に気をつけて利用しなければならないと感じます。私は大学院生時代、獣医伝染病学研究室でウイルス学を勉強しましたので、多くの医療関係者同様、街中のウイルスが“目に見えて”しまいます。そのせいで、ホテルなどの宿泊施設の場合はどうしても、「直前にチェックアウトした人がコロナに感染していたら…」などとという視点で考えてしまいます。清掃時、バスタブは新しいバスタオルで拭き上げてくれたのか、アメニティや備え付けのグラスなどは不用意に触られていないか、シーツは交換するだけで大丈夫か、マットレスにウイルスが付着していないのか…こんなことを考えていると、頭がおかしくなってしまいそうですので、私は「GoTo」による旅行を利用したことはありません…というよりも、単に利用する時間がないだけなのですが。もちろん、利用する方を否定するつもりはまったくありません。多くの宿泊施設は万全の対策をとっていると思いますし、正しい知識をもって利用すれば、お得に息抜きができるのですから。
そんな訳で、当院では連日、院内の消毒・換気作業を徹底的に行っています。アルコールをスプレーしてサッと拭き上げるのではなく、ひたひたになるまでスプレーして一定時間放置したり、1日数回の床全体の塩素系消毒剤による消毒(←これもひたひたに…)は欠かしません。この「消毒ミッション」、一日中やっていると相当のエネルギーを浪費します…。それでもコロナ(と消毒剤による手荒れ)に負けず、私たちは引き続き院内の感染防御対策に万全を期し、飼い主さまと動物たちの健康を守っていきたいと考えています。
(2020.12)伊東秀行