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エトセトラ

子宮蓄膿症(pyometra)

フィラリア予防 ◆子宮蓄膿症は、私たちが日常よく遭遇する生殖器系の病気のひとつです。この病気は、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ハムスターなどで見られることがありますが、やはり圧倒的に多いのが、ワンちゃんの子宮蓄膿症です。これは、単純に「子宮外口部からバイ菌が入り込んで子宮内に膿(うみ)が溜まる病気」と思われがちですが、じつは、ホルモンの分泌や免疫が複雑に絡み合って発症することがわかっています。

◆発情期を迎えたワンちゃんは、エストロゲンというホルモンの作用によって発情出血が起こります。このとき子宮内では、子宮頚管(しきゅうけいかん:子宮の膣に近い部分)が開き、精子の上向き移動を助けるような運動が活発になります。この運動は、バイ菌の侵入にとっても好都合で、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などのバイ菌群は、この流れに乗って膣から子宮内に侵入し、じっと発症の機会をうかがいます。

◆発情後期から休止期に入ると、今度は黄体ホルモンの一種であるプロゲステロンというホルモンが分泌されるようになり、子宮内膜を着床準備へと導きます。このときの子宮内膜の変化は、バイ菌の増殖に最適な環境となります。さらに、プロゲステロンの分泌にともない、マクロファージという免疫細胞の活性が低下し、子宮粘膜のバイ菌に対する感受性(影響の受けやすさ)は増加します。こうして、子宮内でバイ菌が増殖と死滅を繰り返しながら、膿(うみ)となってゆくのです。
  • どんな症状が現れるのでしょうか?
  • いちばんわかりやすくハッキリした症状は、陰部からの膿性(のうせい)あるいは血様(けつよう)の“オリモノ”です。ただし、オリモノを排泄しない閉塞性の子宮蓄膿症も少なくありませんので、注意が必要です。このほか、この病気が徐々に進行してくると、食欲不振、元気の消失、多飲多尿(たいんたにょう)、嘔吐などの症状がみられます。そして、治療のタイミングを逃してしまうと、細菌の毒素(エンドトキシン)によって各臓器が障害され、最悪の場合、敗血症性ショックとなって死に至ります。
  • 診断はどのようにして行うのでしょうか?
  • 病状にもよりますが、ある程度進行した子宮蓄膿症の診断は比較的カンタンで、稟告(りんこく:症状を聞きとること)、臨床症状、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などによって、総合的に診断することが可能です。ただし、初期の場合は、粘膜子宮や子宮腺の増殖、子宮内膜症などの前段階にとどまり、診断に手間取ることも少なくありません。
  • どんな治療法があるのでしょうか?
  • 治療は大きく分けて、内科的な方法と手術による外科的な方法があります。
    【内科的治療】
    内科的な方法は、点滴によってワンちゃんの水和状態や電解質組成を補正するとともに、抗生物質の投与、エンドトキシンに対する治療などを行います。また、PGF2αというホルモン剤を投与し、子宮を収縮させることで陰部からのオリモノの排泄を促し、同時に黄体を退行させて子宮内環境を整え、バイ菌の増殖を抑制する、という方法が行われることがあります。しかしながら、これらの方法によって治癒(ちゆ)したように見えても、数カ月くらいで再発することもあり、確実な治療法とはいえない面があります。
    【外科的治療】
    手術によって子宮と卵巣を“丸ごと切除”するため、再発しないという意味では最も確実性の高い方法です。ただし、例外なく全身麻酔を施さなくてはならないため、病状が進行した動物ではある程度の麻酔リスクがあることを、飼い主さまにご理解いただく必要があります。
    手術は、通常の避妊手術と異なり、子宮内の膿(うみ)を極力、お腹の中に落とさないよう、細心の注意をはらって行われます。一般的に、手術後の経過は手術を早期に行うほど良好で、肝臓や腎臓などの臓器障害、エンドトキシンの影響が軽微なものであれば死亡率は少なくなりますが、肺水腫や「DIC(播種性血管内凝固)」という複雑な病態をたどるものもあり、この場合の予後は、とても厳しいものになります。
    したがって、飼い主さまがワンちゃんの異常にいち早く気づき、私たちに早期にご相談いただくことが、治療を成功させる何より大切なポイントとなります。

アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis ; AD)

近年、多くの動物たちが屋内で過ごすようになり、ヒトとの距離がグンと近づいてまいりました。換言すれば、動物の生活そのものの“ヒト化”が進んできたということになるのでしょうか。それにともない、以前なら見られなかった、いわゆる現代病といえるものが増えてきているように感じます。その代表格が、アレルギー性皮膚疾患のひとつであるアトピー性皮膚炎(AD)です。 一般的に、アレルギー性皮膚疾患といわれるものの中には、ADのほか、「食物アレルギー(FA)」、「接触性アレルギー性皮膚炎」などがありますが、ADとFAを同一のものとして混同されている飼い主さまが多いようです。

◆ワンちゃんのアトピー性皮膚炎(AD)は、ハウスダスト、花粉、ダニ、真菌などの環境抗原が体内に侵入することで、軽度から重度のかゆみや炎症を引き起こします。以下、AD発症のメカニズムを簡単にご説明します。

◆動物の体内に細菌やウイルスなどの病原体(抗原)が侵入すると、免疫機能が働いて「抗体」という中和物質が産生され、これらの抗原を排除しようとすることはご存知かと思います。 同じように、環境抗原であるハウスダスト、花粉、ダニ、真菌など(これらを“アレルゲン”といいます。)の侵入によって、体内では特定のアレルゲンに対する「IgE抗体」が産生されます。このIgE抗体の産生が過剰になると、肥満細胞(←笑ってしまうような名前ですが、太っている動物と関連している訳ではありません・・・。)と呼ばれる細胞にIgE抗体が結合し、さらに、アレルゲンの作用によって結合体が形成されると、肥満細胞はヒスタミンやサイトカインと呼ばれる生理活性物質をさかんに放出します。これがADにおけるかゆみや炎症の原因となるのです。つまり、ADは「過剰な免疫反応の結果、発症する病気」といえるでしょう。

◆一度“アレルギーのスイッチ”が入ってしまう(感作されてしまう)と、そのアレルゲンにさらされている間は、つねにかゆみに苦しむことになります。そして、そのかゆみは季節による差はあれ、恒久的に続くことになります。 一般的に、ワンちゃんのADが初めて発症する年齢は、3才くらいまでとされています。

◆これに対し、食物アレルギー(FA)は、離乳期に摂食した食べ物(食物たんぱく)による影響が大きいとされています。すなわち、離乳期の未成熟な腸の粘膜がたんぱく質を十分に分解できず、これによって過敏症が発生すると考えられています。FAは、その原因物質を食べ続けている間、つねにかゆみや皮膚の病変を引き起こします。

【ADとFAの違いは?】
ADの環境抗原であろうと、FAの食物抗原であろうと、何らかの原因物質が体内に侵入してかゆみを引き起こすということに変わりはありません。しかしながら、「環境抗原に対してIgE抗体の上昇を認めたものをAD」、「食物抗原に対するIgE抗体とリンパ球反応が認められ、(以下にお話しする)除去食試験で反応がみられたものをFA」とする考え方がもっとも正しいようです。(←他にもさまざまな考え方や定義があります。) 上記のIgE抗体の測定やリンパ球反応検査は、外注検査で実施可能です。

【FAに対する除去食試験とは?】
FAと診断するためには、現在与えているすべてのフードを中止し、アレルゲンフリー(アレルゲンを含まないフード)の除去食のみを与えます。最低1.5~2カ月間、最大で3カ月間、これを続けてかゆみが消失または低減するかどうかを観察します。(反応が早ければ、3週間程度でかゆみが低減します。)これは、ワンちゃんと飼い主さま双方にとって、とても根気のいる食事制限トライアルとなります。この間、他のフードやオヤツ類は、いっさい与えてはいけません。 症状が改善したら、今まで与えていたフードやオヤツ類を1種類ずつ与えていきます。(これを「負荷試験」といいます。)このとき、もとの症状が再現された場合、FAであると診断します。

【ADの治療について】
■多くの場合、ADが完治することは、残念ながらありません。使用する薬剤の副作用にも注意しながら、かゆみや炎症をいかに低減し、ワンちゃんのQOL(生活の質)をどれだけ高めてあげられるかが、治療のポイントとなります。
■多くのワンちゃんは、皮膚のバリア機能が失われ、細菌や真菌の感染を同時に患っていることが多いので、これらの治療も同時に行います。また、シャンプー療法は皮膚表面のアレルゲンを洗い流し、皮脂の量を整えますので、かゆみの低減に役立ちます。
■ADの治療に用いる薬剤は、かゆみや炎症を抑えるための副腎皮質ホルモン剤(いわゆるステロイド剤)、皮膚の感染を抑えてかゆみを低減させる抗菌剤や抗真菌剤、ステロイド剤の使用量を減らす目的で用いる抗ヒスタミン剤や必須脂肪酸製剤、皮膚表面を清浄化し、皮脂の量を調節するための薬用シャンプーなどです。このほか、長期的な効果を期待してγ型インターフェロンを用いることもあります。なお、副腎皮質ホルモン剤や抗菌剤などは、内服薬ではなく外用薬(スプレータイプなど)として使用することもあります。
■そして近年、「アトピカ」という新しいタイプのおくすり(免疫抑制剤)が使われ始めています。「アトピカ」は、過剰な免疫の働きのみを選択的にブロックします。その使用法については特別な注意とアドバイスが必要となりますので、当院までお問い合わせください。

下部尿路疾患(Lower Urinary Tract Disease;LUTD)

■「あれっ?トイレの姿勢を何回もするけれど、オシッコが出ていないみたい…」、「何だかオシッコが赤くない?」・・・あなたのワンちゃん&ネコさんにそんな症状がみられたら、要注意です!

■「LUTD(Lower Urinary Tract Disease)」は、“特発性膀胱炎”や“ストルバイトあるいはシュウ酸カルシウムなどの尿路結石(または尿道栓子)”などにともなう尿路系トラブルの総称です。
LUTDになると、排尿困難、頻尿(ひんにょう:オシッコに何回も行くこと)、血尿、トイレ以外での排尿、腹部の痛み・・・などの症状がみられます。かりに、尿道結石などでオシッコが完全に出なくなってしまいますと、48時間以内に治療を開始しなければ、早急に死の転機に向かうとされています。

■LUTDの原因は多岐にわたりますが、不適切な食餌(食事)、ミネラル類の過剰摂取、飲水量の低下、排尿機会の喪失、細菌による尿路感染、ストレスなどがこれにあたります。

■ベルノス動物病院では、前述のような症状のワンちゃん&ネコさんに対し、 まず最初に尿検査を行い、膀胱炎の程度や血尿の有無、尿路結石(多くは“結晶”という微細な形でみられます。)などを調べます。
オシッコが1滴も出ていなければ、自然排尿による尿検査そのものが不可能ですので、レントゲン検査やエコー検査によって、排尿を妨げている結石があるかどうかの確認、場合によってはオシッコの出口(尿道口)から「カテーテル」という細い管(くだ) を挿入して、“詰まり”がないかを確認します。膀胱までスルスルとカテーテルが入っていけば、「詰まりがない」と判断します。

■詰まりがなければ、尿検査(←適切な方法で採取した尿の細菌培養を含みます)の結果にしたがい、内科的な治療を開始します。
内科的治療は、抗生剤、止血剤、鎮痛剤、抗炎症剤、ごくまれに抗うつ剤などを単独で、または組み合わせて使用します。ここで忘れてはならないのが、特別療法食の存在です。特別療法食は、尿のpH(酸性・中性・アルカリ性)を調整して結石または結晶を溶かし、また、飲水量を増やす優れた作用を有してい ますので、LUTDでは必須の治療アイテムとなります。
◇尿道口から挿入したカテーテルが途中で入って行かなくなった場合、詰まり (尿道結石または尿道栓子)があると判断し、尿毒症という危険な病態を回避するため、ワンちゃんの場合は「いったん結石を膀胱に押し戻す処 置」、ネコさんの場合は「特殊な機器(超音波尿道チップ)を使って尿道栓子を破砕する処置」を行います。
これらの処置は、ワンちゃん&ネコさんに軽度の麻酔や鎮静をほどこすことで、安全に行うことができます。カテーテルが膀胱内に挿入できるようになったら、“カテーテルを入れっぱなしのまま”固定し、次の段階へと進みます。
◇ワンちゃんはその後、膀胱内に押し戻した結石の数量をレントゲンやエコー検査によって精査し、「膀胱切開術(Cystotomy)」や「膀胱に入れた生理食塩水による水圧推進法」で結石の除去が可能かどうか、慎重にプランニングしていきます。
ときに、もっと上の部分、すなわち腎臓や尿管(腎臓でつくられた尿を膀胱へ運ぶ細い管)に結石が存在していることもありますので、注意が必要です。
◇ネコさんの場合は、超音波尿道チップによる破砕処置のあと、膀胱内を数回洗浄し、その後、①カテーテルを抜いて経過観察とするか、②カテーテルを留置したまま入院させ、治療を継続するか・・・病状をみながら飼い主さまとご相談のうえ、決定していきます。
ただし、LUTDは症状の再発が多い病気ですので、①の場合は「次の日に、また尿が出なくなった」ということもあり、飼い主さまにその旨をご理解いただかなくてはなりません。

■治療を成功に導くために、ワンちゃん・ネコさんともに、さまざまな「リスク要因」を極力排除しなくてはなりません。これらの多くは、①環境改善、②食餌管理、③尿検査・画像検査を含む定期健診によって達成可能なものばかりです。

■LUTDについては、本稿で集約できないほど多くの知見がありますので、ご来院時に、個々の病状に合わせてご説明をさせていただきます。